川島さんのプロフィールを拝見したら、音楽を本格的に始められたのが10歳ぐらいのときって書かれてたんですけど、どういうきっかけで始められたんですか? | |
川島 | 実は、母親からの強制で。自分からピアノに行ったわけではなく、もともとは母親が僕に強制的にさせたっていうのが始まりだったんです。 |
佐藤 | あ、そうなんですか。結構物心ついてからですよね。 |
川島 | そうですね。 |
佐藤 | 作曲も一緒にそのときから? |
川島 | 作曲はもうちょっと、6年生ぐらいになってからですけど。地元が岡山だったので、神戸に平吉毅州先生がいらっしゃって。 |
佐藤 | はい! |
川島 | 月に1度習いに行ってたんですよ。ところが、譜面を書くのがどうも好きじゃなくって。先生のところにいっても即興演奏ばっかりやってた。 |
佐藤 | へえ。 |
川島 | モティーフをいただいて、その即興ばっかりやってて、「次は譜面書いて来いよ」って言われ続けて何年も書かなかったっていう感じ。 |
佐藤 | そうなんですか。平吉先生ってどんな方だったんですか? |
川島 | もう、すごくダンディで・・・ユーモアのある、とても良い先生でしたね。もうだいぶ前にお亡くなりになられましたけど。 |
佐藤 | そうですよね。曲はいくつも存じ上げてますが・・・。 |
川島 | 僕の印象は小学生のときの印象でしかないんですけど、それでもとてもダンディな先生だなと。格好いい先生でしたね。 |
佐藤 | 僕が2007年にシューベルト国際コンクールを受けようと思ったときに、その前の回の優勝者として川島さんのお名前があって、そこで初めて川島さんのことを知ったんですけれども、その2005年のコンクールのことで、何かお話を聞かせていただけますか? |
川島 | まあ変わっていることといえば、会場がね、カジノだったという。 |
佐藤 | やっぱりカジノだったんですね(笑) |
川島 | そうそう、未だにあそこでやってるのかなと思いますけどね。それ以外は、他の国際コンクールと比べて特に雰囲気が違うっていう印象は持ちませんでしたけど、ただシューベルトの名前を冠しているだけあって、当然ですけどシューベルトの曲がメインで審査されるっていうのが特別なところですよね。2次予選からは、本当にシューベルトばっかり。でも1次予選は他のコンクールとそんなに変わらなくて、ラフマニノフのエチュード=タブロー(音の絵)とか、ショパンのエチュードとか、スカルラッティのソナタを弾かなきゃいけなかったり。 |
佐藤 | そうですね。1次に1曲だけシューベルトの曲が課題に入ってますよね、あれは何だったんですか? |
川島 | ええとね、D894の「幻想ソナタ」の4楽章。 |
佐藤 | 変なのが出ますね、やっぱり(笑) |
川島 | いきなりあれで始めるっていうのはものすごく神経使いますよね。1楽章が静かに始まって、2楽章、3楽章、そして4楽章のあれが来るから曲になるんですけど。 |
佐藤 | そうですよね。僕らのときはD946の「3つのピアノ曲」の3曲目だったんですよ。ハ長調の。 |
川島 | それもまた変わった選曲だねえ。 |
佐藤 | でも結構、人によってテンポも違うし、いろんな解釈があって、だから面白い選曲ではありましたけど。でもその1曲で判断するのは難しいですよね。シューベルトの曲あれしかないですからね、1次は。 |
川島 | そうだね、それだけで判断するのはね。 |
佐藤 | コンクールのときはホストファミリーでした? |
川島 | そうです。非常に良くしてもらって、ドイツのお父さんお母さんって感じでね。今でも親しくさせてもらってますけど。 |
佐藤 | もうその頃は、ドイツに行かれてからだいぶ経ってたんですか? |
川島 | 1998年の10月にワイマールのリスト音大に入ったので、結構長くいてからですね。もともとシューベルトコンクールは絶対受けようと思ってたわけではなくて、もう歳が歳だったので、受けられるコンクールがそんなに多くはなかったんです。シューベルトコンクールは優勝したらCDを作ってもらえるっていう副賞があって、それに心惹かれたというか。それまでは恥ずかしながらシューベルトの曲はさほど多くは弾いてなかったんですけどね、コンクールを受けるときに、D958の大きなソナタとか、他の曲もいっぱい勉強する機会に恵まれて。 |
佐藤 | 僕もそうでした。 |
川島 | それまではね、どちらかというと「退屈」っていうふうに思ってたんですよね。だけど、コンクール優勝後は、佐藤君もそうでしょうけど、どうしてもシューベルトを弾いてくれっていうオファーがあるので、それからどんどんシューベルトの音楽に惹かれていって、もっとやりたい、もっとやりたいと・・・。そこからシューベルトが好きになっていったんです。 |
佐藤 | でもレパートリーはすごく幅広くていらして、デビューCDのときも半分は「くるみ割り人形」(プレトニョフ編)を。 |
川島 | いやあれはですね、もともとはD958とD894、大きなソナタ2曲っていうふうに思ってたんですよ。 |
佐藤 | あれ、そうなんですか。 |
川島 | だけど、僕が習ってたラピツカヤ先生が、そんなものは絶対にダメだって。 |
佐藤 | えー! |
川島 | バラエティに富んでた方が聴きやすいって。あなたはまだ老けてるわけでもないんだから、そんな曲は弾かなくていいって。今のうち、指が動く間は「くるみ割り」のような曲をやった方がいいっていう先生の強い勧めもあって、あのプログラムになったんです。 |
佐藤 | そうなんですね。 |
川島 | もともとは違ったんです、だから。 |
佐藤 | 今、メインで取り組んでいるレパートリーは? |
川島 | 今はもう、ドイツ音楽が本当にメインですね。先生の影響というのもあって、やはり先生のお得意なものを教えてもらった方がいいと思って、ロシアものとかドイツものに、だんだんレパートリーがそっちの方へいくようになっちゃって。留学する前はフランスものが大好きで、たくさんやっていたんですけど、だいぶ遠ざかってしまいましたね。今でも好きですけど、やっぱり今はベートーヴェン、シューベルト、モーツァルト、ハイドンのような曲に惹かれてますね。 |
佐藤 | うーん、僕も同じですね。なんとなくドイツものの方が弾く機会も多くなるし。フランスものなんかめっきり弾かなくなりましたね。だんだん守備範囲が狭まって、絞られていくのかなって感じはするんですけど。 |
川島 | なるほどね。 |
Author:Takashi Sato
佐藤卓史(さとうたかし)
ピアニスト。1983年秋田市生まれ。2014年よりシューベルトのピアノ曲全曲を網羅的に演奏するプロジェクト「佐藤卓史シューベルトツィクルス」を展開中。
公式サイト www.takashi-sato.jp
シューベルト 舞曲 D365 ピアノ・ソナタ D568 佐藤卓史 D567 シューベルトツィクルス 自筆譜 連弾 ドイツ舞曲 幻想曲 D145 即興曲 レントラー 中桐望 メヌエット エコセーズ D593 4手 D947 D566 スケルツォ D178 D557 ワルツ 川島基 悲しみのワルツ 山本貴志 変奏曲 D91 ベートーヴェン D335 D951 D617 D935 D899 D420 D537 D1 ヒュッテンブレンナー ポロネーズ D599 D605a D156 D968 フォーグル オーバーエスターライヒ ヴィッテチェク=シュパウン・コレクション D968A リンツ D459 D681 D605 D668 D29 D529 シューマン 序曲 D850 カロリーネ D571 ツェリス ロンド D602 D575 D664 D959 D592 アンダンテ D511 D760 D722 D334 D299 D608 D597 シュパウン D506 アッツェンブルック D784 アダージョ フェルディナント D618 ブラウン D624 D2e D980A 補筆 D886 D370 D374 D378 D380 感傷的なワルツ D790 D779 行進曲 英雄的行進曲 第2稿 シューベルト性格的な行進曲 D968B D972 D249 D387 D9 Ms D125 月刊ショパン D301 グラーツ幻想曲 軍隊行進曲 D759 弦楽四重奏曲 D36 D128 リスト D824 D2d D32 D3 D845 最初のワルツ クラーマー Brown, ヴォジーシェク トマーシェク マルシュナー エクローグ D625 D505 D279 D157 オリジナル舞曲 アスマイヤー D783 D970 溢れる涙 D732 オペラ 4手 アルフォンソとエストレッラ オクセンブルク城 D118 D796 ショーバー D647 D667 D590 D586 シェーンシュタイン D591 シュタイアー D666 コラー ヨゼフィーネ D812 D813 D366 アイゼンシュタット パハラー ポブウォツカ ショパンコンクール D48 ピリス D823 イェンガー グラーツ バウエルンフェルト D818 D817 シュヴィント グムンデン D849 ザルツブルク バート・ガスタイン エステルハーツィ D924 ヴィッテチェク ディアベリ D911 ウィーン楽友協会 ピンテリクス シューベルト国際コンクール ショパン ソナタ ティリモ チューシッド D969 高雅なワルツ D820 フランスの歌 D797 君を愛す D644 1817年 ミニョンの歌 D958 ソナチネ アレグロ・モデラート D908 アレグロ 人生の嵐 D925 グラーツのワルツ グラーツのギャロップ D603 D798 ライアー回し 菩提樹 D960 ドッペルゲンガー 作品111 D773 D675 D816