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シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
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ヴァイオリン・ソナタ(ソナチネ 第2番) D385 概説

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ短調 Sonate D-dur für Violine und Klavier D385
作曲:1816年3月 出版:1836年(「3つのソナチネ」作品137 第2曲として)
楽譜・・・IMSLP


前作と同じ1816年3月の日付があるが、その内容の落差には驚嘆を禁じ得ない。ここに聴かれる寂寞たる孤独、隠された狂気、異世界への誘いは、後期シューベルトが開拓していった地平に通じている。病魔に冒されながらそこに辿り着いたのではなく、シューベルトは早くも19歳にしてその扉を開けていたのだ。

第1楽章は不安げな弱音のピアノソロと、その静寂を打ち破る怒気を孕んだヴァイオリンが跳躍音程を提示する、緊張感の漂う第1主題から始まる。8分音符(2分割)のみだったリズムはハ長調の副次主題から3連符(3分割)が優勢となり、2分割と3分割の葛藤がヘ長調の第2主題で顕在化する。展開部は静寂に包まれ、ヴァイオリンは高音域をさまよい、ピアノが8分音符を刻みながら数度転調するのみ。しかしその凍てついたような寂寥感はただごとではない。再現部の大きな特徴はニ短調から始まっていること(下属調再現)で、この時期のシューベルトが何度か試みた構成である。コーダではついに刻みは4分音符(分割なし)にまで減退し、闇の中に沈んでいく。
第2楽章はヘ長調の緩徐楽章。コラール風の主題は温かみに満ち、慈悲深さをも感じさせる。推移部では16分音符のパッセージを繰り返しながら複雑な転調を経て変イ長調に到達、希望に満ちた調性で主題が再び奏でられるが、どこか落ち着きがない。推移部でまた幾度とない転調を重ねながら、元のヘ長調で主題が帰ってくる。此岸と彼岸を行き来するシューベルトの精神の本質が明示された楽章である。
第3楽章はニ短調のメヌエット。力強い6度跳躍で始まる主部に対して、変ロ長調のトリオでは少し気恥ずかしそうなそぶりを見せる。
ロンド=ソナタ形式の第4楽章は、同じ調性のピアノ・ソナタD784やD845のフィナーレにも通じる、彷徨する魂を描くような無窮動。スタティックな2分割とダイナミックな3分割のリズムの対比は第1楽章から受け継がれ、後年のシューベルトのドラマトゥルギーの源にも繋がっていった。
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  1. 2023/05/15(月) 22:24:57|
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