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シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
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ヴァイオリン・ソナタ(ソナチネ 第1番) D384 概説

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ニ長調 Sonate D-dur für Violine und Klavier D384
作曲:1816年3月 出版:1836年(「3つのソナチネ」作品137 第1曲として)
楽譜・・・IMSLP


1816年の3曲のソナタの中で最もウィーン古典派の様式に近く、シンプルで明朗な響きと規則的な楽節構造、冒頭の両楽器のユニゾンなど、モーツァルトの作品と言われれば納得する人も多いだろう。
一方で各楽章の調性や拍子など、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第1番(ニ長調Op.12-1)をモデルにしたと思われる点も多い。

第1楽章の冒頭を印象づける上行する分散和音音型は第1主題にも第2主題にも共通して現れ、結果的に両主題の卓立性は不明瞭となる。展開部ではこのモティーフを両楽器が交互に執拗に繰り返しながら、半音階的に転調を重ねていく。この反復による転調のシークエンスはシューベルトの展開部を特徴づける要素といえる。
イ長調の第2楽章の主部は5小節単位という不規則な楽節ながら、やはりモーツァルトのオペラの一場面を思わせるような清楚な主題が歌い交わされる。対照的に、イ短調の中間部での纏綿たる歌謡性と半音階的進行には濃厚なロマンが漂う。
第3楽章はロンド=ソナタ形式のフィナーレで、舞曲のリズムに乗って一点の曇りもない溌剌とした音楽が続いていく。
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  1. 2023/05/14(日) 23:18:46|
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