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シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
次回公演詳細

[告知] シューベルトツィクルス第16回「舞曲Ⅲ ―最後のワルツ―」

シューベルトツィクルス第16回
2022年4月14日(木) 19時開演 東京オペラシティリサイタルホール
♪ドイツ舞曲 D135 ♪ドイツ舞曲 D139 ♪20のワルツ D146(「最後のワルツ」)
♪エコセーズ D158 ♪ドイツ舞曲 D975 ♪16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ D783
♪3つのドイツ舞曲 D971 ♪3つのドイツ舞曲 D973 ♪2つのドイツ舞曲 D974 ♪2つのレントラー D980B
♪2つのドイツ舞曲 D841 ♪ギャロップと8つのエコセーズ D735
一般4,500円/学生2,500円 →チケット購入
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  1. 2022/04/14(木) 19:00:00|
  2. シューベルトツィクルス
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ギャロップと8つのエコセーズ D735 概説

ギャロップと8つのエコセーズ Galopp und acht Ecossaisen D735
作曲時期不明 出版:1825年(作品49)
楽譜・・・IMSLP

1825年11月に「34の感傷的なワルツ」D779とともにディアベリから出版されたが、早くも1年後に再版され、その表紙には「1826年の謝肉祭に、ペストの七選帝侯ホールでの舞踏会で演奏された」と記されている。
なぜこの作品が遠くペスト(現在のブダペスト)で演奏されることになったのか、それがどういう意味を持つのかはよくわからないが、かなり長い期間にわたって、しかもオーケストラ版で演奏されたようで、大人気を博したものと思われる。同年ペストのミュラー社からも刊行されたこともそれを裏付けている。
最初にダ・カーポ形式のギャロップが置かれ、その後8曲のエコセーズが続く。いずれも自筆譜は現存しないが、第6エコセーズはD977-1(変ニ長調)とほとんど同一であり、かなり早い時期(1815年前後)に成立した作品と推測されている。

ギャロップ ト長調/ハ長調
2拍目にアクセントのある陽気なギャロップ。ハ長調のトリオではさらに疾走感が高まる。

エコセーズ
1. ト長調
ファンファーレ風の和音連打で始まる。後半ではロ長調に接近する。
2. ホ短調
ホ短調とト長調の間を揺れ動くが、曲頭と曲尾はホ短調。おなじみのダクティルスのリズムが主要モティーフとなっている。
3. ニ長調
こちらは逆に短短長リズムの連打が特徴的なエコセーズらしい楽曲。3度重音が技巧的。
4. 変ロ長調
右手は2声で重ねている。後半では剽軽な表情を見せる。
5. 変ホ長調
3度重音が続く技巧的なエコセーズ。後半のトレモロ音型が面白い。
6. 変ホ長調
3連符で始まる軽快なエコセーズ。最終2小節はD977-1よりも1オクターヴ高く指示されている。
7. 変ホ長調
全編にわたりオクターヴ+スタッカートの、シャンパンの泡のような軽やかなエコセーズ。前半は延べで記譜されている。
8. 変イ長調
分散和音の跳躍の多いメロディーに細かなアーティキュレーションが指定されている。後半の突然のハ長調(ヘ短調?)への転調が意表を突く。
  1. 2022/04/13(水) 10:53:33|
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2つのドイツ舞曲 D841 概説

Brown, Ms. 58  2つのドイツ舞曲  Zwei Deutsche
タイトル:なし
日付:1825年4月
所蔵:Leon Robbins(個人蔵)

2つのドイツ舞曲 Zwei Deutsche D841
作曲:1825年4月 出版:1930年
楽譜・・・IMSLP

独立した自筆譜(Brown, Ms.58)には1825年4月と記されているが、タイトルはない。

1. ヘ長調 [B] その他
付点のアウフタクト、2拍目から長く伸ばされるオクターヴのバスが静かなスウィング感を生み出す。B部後半での短調への接近が美しい。

2. ト長調 [B] メヌエット型
右手は重音と属音保続を交替させるヴァイオリン的なテクスチュア。鄙びた印象だが、やはりB部の和声は少し凝っている。
  1. 2022/04/13(水) 00:20:25|
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2つのレントラー D980B 概説

Brown, Ms. 16  2つのレントラー 変ホ長調  Zwei Ländler in Es
タイトル:Ländler
日付:なし
所蔵:シュタイアー合唱協会

2つのレントラー Zwei Ländler D980B
作曲時期不明 出版:1925年
楽譜・・・IMSLP

独立した自筆譜(Brown, Ms. 16)として残されているこの2曲はかつてはD679を与えられていたが、作曲時期不詳のため1978年の目録改訂時に現在の枝番号に落ち着いた。裏面は他人の記譜練習に用いられているという。

1. 変ホ長調 [B] メヌエット型ドイツ舞曲型
全編を通じてメロディーが3度で重ねられていること、またA部は左手もト音記号で記譜されているように高音域に偏っていることが特徴である。
ブラウンが指摘した通り、このレントラーは「12のドイツ舞曲」D420の第10曲(イ長調)とほぼ一致している。かつてシュパウン家が所有していた筆写譜(後に消失)には1816年という作曲年が記録されており、ブラウンはこれをもとに成立年代を推測しているが、新全集はより慎重な立場を取っている。

2. 変ホ長調 [B] ワルツ型ドイツ舞曲型
起伏の多い器楽的な旋律線とI・Vの交替のみのシンプルな和声は確かにレントラーの特徴を帯びている。
  1. 2022/04/12(火) 15:56:16|
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2つのドイツ舞曲 D974 概説

2つのドイツ舞曲 Zwei Deutsche D974
作曲時期不明 出版:1889年
楽譜・・・IMSLP

かつてブラームスが所有していた、5曲の舞曲が書き込まれた自筆譜(Brown, Ms. 48)のうち「17のレントラー」D366に入集しなかった2曲。新全集では「2つのレントラー」のタイトルになっている。

1. 変ニ長調 [B] ワルツ型
メロディーの3度重音や分散和音音型は確かにレントラーの特徴を有する。B部前半ではメロディーのモティーフが左手に移動する。

2. 変ニ長調 [B] ワルツ型
こちらも跳躍の前の細かい休符や長音に付けられたアクセントなど、レントラー調といっていいだろう。ほとんどIとVしか登場しないシンプルな和声。
  1. 2022/04/12(火) 14:35:00|
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3つのドイツ舞曲 D973 概説

3つのドイツ舞曲 Drei Deutsche D973
作曲時期不明 出版:1889年
楽譜・・・IMSLP

9曲のドイツ舞曲を収めたBrown, Ms. 46のうち、「感傷的なワルツ」D779に採用された6曲(D779-1,2,3,4,34,33)を除外した3曲である。

1. ホ長調 [B] メヌエット型
メヌエットの特徴が色濃い舞曲。1拍と1/4のアウフタクトはD779の序盤の舞曲たちと共通している。

2. ホ長調 [B] その他+ワルツ型
同じく1拍と1/4のアウフタクトを持つ。付点リズムの重音と左手の空虚5度が鄙びた雰囲気を醸し出している。

3. 変イ長調 [B] その他
短長リズムで、強勢の置かれた2拍目から1拍目へなめらかにスラーがかけられている。B部では変ハ長調に一時的に転調する。
  1. 2022/04/12(火) 01:52:34|
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3つのドイツ舞曲 D971 概説

3つのドイツ舞曲 Drei Deutsche D971
作曲時期不明 出版:1823年1月
楽譜・・・IMSLP

1823年1月にザウアー&ライデスドルフ社から刊行された「1823年の謝肉祭のオリジナルドイツ舞曲集」に寄せられた3曲。この曲集にはシューベルトを含む12名の作曲家が名を連ねており、その中にはチェルニーヴォジーシェク、そして例によって出版元のライデスドルフも入っている。

1. イ短調 [B] メヌエット型
荒々しくシリアスなドイツ舞曲。左手のパターンはヘミオラを形成する。

2. イ長調 [T] ワルツ型
左手のワルツ型の伴奏の上で、右手が不規則に上行音階を奏でていく面白い趣向。B部では長3度上の嬰ハ長調に転調する。

3. ホ長調 [T] その他
右手がオクターヴで重ねられた華やかな響きの舞曲。B部は嬰ハ短調のドミナントが支配する。
  1. 2022/04/11(月) 22:25:15|
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16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ D783 概説

16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ Sechzehn Deutsche und zwei Ecossaisen D783
作曲:1823年前後? 出版:1825年1月(作品33)
楽譜・・・IMSLP

イタリア・コモ出身のピエトロ(ペーター)・カッピ Pietro (Peter) Cappi (1779-1826?)は1792年にウィーンに移り、叔父とともにアルタリア社で働いていた。叔父の死後、1816年に自らの出版社を興すが、1818年にアントン・ディアベリとタッグを組み、「カッピ&ディアベリ社(ディアベリ&カッピ社)」として数多くの楽譜出版を手がけた。その後は資料によって記述がまちまちなのだが、1823-24年頃に共同経営を解除したようだ。
1825年1月に出版されたこの舞曲集は「カッピ社」からの刊行である。つまりカッピはディアベリと袂を分かったあと、再び単独名義で出版事業を行っていたことが見てとれる。シューベルトの舞曲集はディアベリ&カッピの独壇場だったが、分離の際にこの曲集の権利をカッピが獲得したのだろうか。
しかしカッピは翌1826年頃にグラーツで死去したとみられている。以降はディアベリが事業を継承し拡大させていくことになった。

「作品33」として出版されたこの曲集の収録曲は、複数の自筆譜にまたがっており、また自筆譜の見つかっていないものもあって、ソースの詳細はここには書き切れない。全体的な傾向としては、D146(後半)やD366の収録曲とともに並べられていることが多く、1823年前後に作曲された舞曲のセレクションとみることができる。

ドイツ舞曲
1. イ長調 [B] メヌエット型

ブラームスが1864年に出版した「12のドイツ舞曲」D790(作品171)の第2曲と同一曲。全24小節で通常であれば三部形式[T]なのだが、後半でA部が回帰しないため、B部が2倍に拡大された二部形式という特異な構成をとる。
冒頭4小節がオクターヴユニゾンという意表を突いた開始。[5]で和音が加わり、オーケストラ的に響きが広がる。B部では嬰ハ短調から始まってさまざまに転調していき、やや収拾がつかなくなったあたりで終止する。

2. ニ長調 [B] ドイツ舞曲型
「感傷的なワルツ」D779の序盤を思わせる、1拍と1/4のアウフタクトを持つ。コラール風の穏やかな舞曲。

3. 変ロ長調 [B] ワルツ型
1拍目と2拍目の間の細かい休符がレントラー風のニュアンスを出している。III度の和音への指向が強い。

4. ト長調 [B] その他
アウフタクトで駆け上がる音階のパッセージが華やかなヴィルトゥオーゾ風の楽曲。

5. ロ短調→ニ長調 [B] ワルツ型
悲しげなロ短調で始まるがすぐにニ長調に落ちつく。8分音符が続く器楽的なメロディー。前半では2拍目に置かれていたアクセントが後半では1拍目に移動する。

6. 変ロ長調 [B] その他
両手でファンファーレ風に和音を連打するエネルギッシュな舞曲。前半はト短調で終止し、後半では減七の和音が頻出する。

7. 変ロ長調 [B] ワルツ型
"mit erhobener Dämpfung"(ダンパーを上げて=ペダルを踏んで)という異色の指示。付点リズムがブラームス風の大人の雰囲気を出す。

8. 変ホ長調 [B] ワルツ型
2拍目の2分音符への強勢が全体のリズム感を偏らせていく。

9. ハ長調 [B] その他
第6曲に似た和音連打の舞曲だが、後半の転調の重なりが緊張感を高める。

10. イ短調 [B] ワルツ型
こちらもD790-8(変イ短調)に酷似しており、第1曲同様に後半が拡大されている。愁いに満ちた旋律が続く。

11. ホ短調→ト長調 [B] ワルツ型
8分音符の旋律線には跳躍が多く、レントラーを思わせる。

12. ハ長調 [B] ドイツ舞曲型
重音の右手を単純な左手が支える。

13. ハ長調 [B] その他
アウフタクトに付けられたfpがしゃっくりのような独特の拍感を表出する。

14. ヘ短調→ヘ長調 [B] ワルツ型
前半はヘ短調から変イ長調へ。後半では調号も変わりヘ長調となる。プラルトリラーが多用されている。

15. ヘ短調→変イ長調 [B] ワルツ型
3拍目から1拍目にかけてのタイでシンコペーションが起こり、メロディーの重心が3拍目に移動する。

16. ヘ長調 [B] メヌエット型
力強いコラール風の終曲。後半では一時的に変イ長調に転調する。

エコセーズ
1. ロ短調→ニ長調

左手のマーチ風の伴奏型に乗ってエコセーズが始まる。この曲の自筆譜は見つかっていない。

2. ロ短調→ニ長調
D781-1と同一だが、一部左手のオクターヴに変更があり、より弾きやすくなっている。
  1. 2022/04/11(月) 10:04:53|
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ドイツ舞曲 D975 概説

ドイツ舞曲 ニ長調 Deutscher D-dur D975
作曲時期不明 出版:1889年
楽譜・・・IMSLP

ブラームスからウィーン楽友協会に遺贈された「6つのドイツ舞曲」の自筆譜(Brown, Ms.56)のうち、唯一他の曲集に採られなかった第2曲が本作である。

ニ長調 [B] ワルツ型

1拍目に付点リズムを持つマズルカ風の舞曲。後半では2拍目にアクセントが置かれ、さらに民俗色が強まる。一方でVI度から始まる陰影に富んだ和声も魅力的である。
  1. 2022/04/10(日) 21:49:43|
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エコセーズ D782 概説

エコセーズ ニ長調 Ecossaise D-dur D782
作曲:不明 出版:1824年
楽譜・・・IMSLP


1824年2月にザウアー&ライデスドルフ社から出版された「Fr.シューベルトとM.J.ライデスドルフによる人気の新ギャロップとエコセーズ」にはシューベルトの手になる3曲のエコセーズが収録されている。さまざまな作曲家の作品を集めたオムニバス舞曲集にシューベルトが曲を寄せることはたびたびあったが、シューベルトと他の単一の作曲家との「2人集」というべき出版物はこれが唯一のものだ。
相手の作曲家マクシミリアン・ヨーゼフ・ライデスドルフ Maximilian Joseph Leidesdorf (1787-1840)はウィーン生まれで、1822年にイグナーツ・ザウアーと組んで出版社を興し、ベートーヴェンやシューベルトの作品を刊行した。作曲家としても活動したが、成功したとは言い難い。自社から舞曲集を出版するにあたって、シューベルトの知名度に頼ったということなのだろう。はじめにライデスドルフのギャロップが6曲、その後にシューベルトのエコセーズが3曲収められているが、表紙ではシューベルトの名前の方が先に記されている。
この3つのエコセーズのうちの第2曲が本作である。前後にはD781-4とD781-7が、それぞれ♯1のト長調/ホ短調(原曲は♭6の変ト長調/変ホ短調)で置かれている。

D782のドイチュ番号を与えられたこのエコセーズは民謡風の親しみやすい作品で、後半のIII度の和音が意表を突いている。自筆譜は発見されていない。
  1. 2022/04/10(日) 14:41:05|
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