2022年4月14日(木) 19時開演 東京オペラシティリサイタルホール
♪ドイツ舞曲 D135 ♪ドイツ舞曲 D139 ♪20のワルツ D146(「最後のワルツ」)
♪エコセーズ D158 ♪ドイツ舞曲 D975 ♪16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ D783
♪3つのドイツ舞曲 D971 ♪3つのドイツ舞曲 D973 ♪2つのドイツ舞曲 D974 ♪2つのレントラー D980B
♪2つのドイツ舞曲 D841 ♪ギャロップと8つのエコセーズ D735
一般4,500円/学生2,500円
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- 2022/04/14(木) 19:00:00|
- シューベルトツィクルス
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16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ Sechzehn Deutsche und zwei Ecossaisen D783
作曲:1823年前後? 出版:1825年1月(作品33)
イタリア・コモ出身の
ピエトロ(ペーター)・カッピ Pietro (Peter) Cappi (1779-1826?)は1792年にウィーンに移り、叔父とともにアルタリア社で働いていた。叔父の死後、1816年に自らの出版社を興すが、1818年に
アントン・ディアベリとタッグを組み、「カッピ&ディアベリ社(ディアベリ&カッピ社)」として数多くの楽譜出版を手がけた。その後は資料によって記述がまちまちなのだが、1823-24年頃に共同経営を解除したようだ。
1825年1月に出版されたこの舞曲集は
「カッピ社」からの刊行である。つまりカッピはディアベリと袂を分かったあと、再び単独名義で出版事業を行っていたことが見てとれる。シューベルトの舞曲集はディアベリ&カッピの独壇場だったが、分離の際にこの曲集の権利をカッピが獲得したのだろうか。
しかしカッピは翌1826年頃にグラーツで死去したとみられている。以降はディアベリが事業を継承し拡大させていくことになった。
「作品33」として出版されたこの曲集の収録曲は、複数の自筆譜にまたがっており、また自筆譜の見つかっていないものもあって、ソースの詳細はここには書き切れない。全体的な傾向としては、
D146(後半)やD366の収録曲とともに並べられていることが多く、1823年前後に作曲された舞曲のセレクションとみることができる。
ドイツ舞曲
1. イ長調 [B] メヌエット型ブラームスが1864年に出版した
「12のドイツ舞曲」D790(作品171)の第2曲と同一曲。全24小節で通常であれば三部形式
[T]なのだが、後半でA部が回帰しないため、
B部が2倍に拡大された二部形式という特異な構成をとる。
冒頭4小節がオクターヴユニゾンという意表を突いた開始。[5]で和音が加わり、オーケストラ的に響きが広がる。B部では嬰ハ短調から始まってさまざまに転調していき、やや収拾がつかなくなったあたりで終止する。
2. ニ長調 [B] ドイツ舞曲型「感傷的なワルツ」D779の序盤を思わせる、1拍と1/4のアウフタクトを持つ。コラール風の穏やかな舞曲。
3. 変ロ長調 [B] ワルツ型1拍目と2拍目の間の細かい休符がレントラー風のニュアンスを出している。III度の和音への指向が強い。
4. ト長調 [B] その他アウフタクトで駆け上がる音階のパッセージが華やかなヴィルトゥオーゾ風の楽曲。
5. ロ短調→ニ長調 [B] ワルツ型悲しげなロ短調で始まるがすぐにニ長調に落ちつく。8分音符が続く器楽的なメロディー。前半では2拍目に置かれていたアクセントが後半では1拍目に移動する。
6. 変ロ長調 [B] その他両手でファンファーレ風に和音を連打するエネルギッシュな舞曲。前半はト短調で終止し、後半では減七の和音が頻出する。
7. 変ロ長調 [B] ワルツ型"mit erhobener Dämpfung"(ダンパーを上げて=ペダルを踏んで)という異色の指示。付点リズムがブラームス風の大人の雰囲気を出す。
8. 変ホ長調 [B] ワルツ型2拍目の2分音符への強勢が全体のリズム感を偏らせていく。
9. ハ長調 [B] その他第6曲に似た和音連打の舞曲だが、後半の転調の重なりが緊張感を高める。
10. イ短調 [B] ワルツ型こちらも
D790-8(変イ短調)に酷似しており、第1曲同様に後半が拡大されている。愁いに満ちた旋律が続く。
11. ホ短調→ト長調 [B] ワルツ型8分音符の旋律線には跳躍が多く、レントラーを思わせる。
12. ハ長調 [B] ドイツ舞曲型重音の右手を単純な左手が支える。
13. ハ長調 [B] その他アウフタクトに付けられたfpがしゃっくりのような独特の拍感を表出する。
14. ヘ短調→ヘ長調 [B] ワルツ型前半はヘ短調から変イ長調へ。後半では調号も変わりヘ長調となる。プラルトリラーが多用されている。
15. ヘ短調→変イ長調 [B] ワルツ型3拍目から1拍目にかけてのタイでシンコペーションが起こり、メロディーの重心が3拍目に移動する。
16. ヘ長調 [B] メヌエット型力強いコラール風の終曲。後半では一時的に変イ長調に転調する。
エコセーズ
1. ロ短調→ニ長調左手のマーチ風の伴奏型に乗ってエコセーズが始まる。この曲の自筆譜は見つかっていない。
2. ロ短調→ニ長調D781-1と同一だが、一部左手のオクターヴに変更があり、より弾きやすくなっている。
- 2022/04/11(月) 10:04:53|
- 楽曲について
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Brown, Ms. 44 12のエコセーズ 12 Ecossaisen
タイトル:12 Eccossaisses
日付:1823年1月
所蔵:ウィーン楽友協会資料室(資料番号 A261)
12のエコセーズ 12 Ecossaisen D781
作曲:1823年1月 出版:1825年(第1曲)・1824年(第4・7曲)・1889年(その他)
1823年1月の日付を持つBrown, Ms.44の「12のエコセーズ」のうち、第1曲は「16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ」D783の第2エコセーズとして収録されたため、旧全集ではこれ以外の11曲をまとめて曲集とした。これを踏襲してD781を「11のエコセーズ」とする資料や楽譜も多く、中には
D782のエコセーズと合わせて12曲という解釈をしている資料もある。
今回はドイチュ目録に従い、D783-E2を含む12曲を自筆譜と同じ曲順で演奏する。
1. ロ短調→ニ長調 (=D783-E2)理論的にはニ長調のVIの和音から始まっていると解釈することもできるが、ロ短調で始まり途中で平行調のニ長調に転調するとみる方が自然だろう。このように
曲頭と曲尾の調性が異なり、とりわけ平行調への転調が多いのがこのエコセーズ集の特徴で、シンプルで短いエコセーズに変化とドラマを持たせようという工夫が感じられる。
2. 変ト長調突如としてフラット系の世界へ入る。前曲のニ長調から見るとずいぶんな遠隔調だが、ロ短調から見ればドミナント調(嬰ヘ長調)の異名同音と考えられる。後半ではやはり平行調(変ホ短調)への接近が見られる。
3. ニ長調モティーフは第1曲とよく似ている。後半のバスの半音下行が印象的。
4. 変ト長調再び♭6個、そして前半の終わりは平行調の変ホ短調で終止する。後半は単純な反復ではなく、最終2小節に2番括弧が設定されている。
この曲と第7曲、そして
D782のエコセーズは1824年にライデスドルフ社から選集として発表されているが、そこではト長調に移調されている。詳しくは
D782の解説で述べよう。
5. 変ホ長調前曲の平行調(変ホ短調)の同主調。前半ではメロディーがどんどん上昇していく。
6. 変イ長調第4曲同様に平行調(ヘ短調)で前半を終える。後半ではII度調の変ロ短調も経過する。
7. 変ホ短調→変ト長調両手で短い和音を連打する面白い舞曲。[4]の1拍目の不協和音も興味深い。後半では平行調の変ト長調へ転調しそのまま終止する。
8. ロ短調→ロ長調[1]のH音から[2]のEis音というユニゾンの増4度跳躍はまさにデモーニッシュ。後半ではD音に臨時記号の♯がついてロ長調で終止する。全曲の中で最も落ち着かないエコセーズである。
9. ニ長調アウフタクトにドミナントの和音という意表を突いた開始。伸びやかな旋律線が魅力的だ。後半でのバスの半音上行は第3曲と対応する。
10. ロ長調右手がメロディーとともに属音の保続をオクターヴで重ねる。前半の終わりでは平行調の嬰ト短調で半終止する。[11]のFisisとFisの二重倚音はいかにもロマン派的。
11. 嬰ト短調→ロ長調高音域での逆付点のリズムがクリスタルな響きを生む。後半では平行調のロ長調に転調し、[12]のIV度ドミナントの強奏が衝撃を与える。
12. ロ短調→ニ長調第1曲と同じ調性関係の終曲。シューベルトの偏愛したダクティルスのリズムに支配されている。
- 2022/04/10(日) 09:23:31|
- 楽曲について
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12のドイツ舞曲(「レントラー」) Zwölf Deutsche (genannt "Ländler") D790 Op.171
作曲:1823年5月 出版:1864年
1823年5月の日付が記された本作の自筆譜は、後に
ヨハネス・ブラームスの手に渡り、彼が匿名の校訂者となって、1864年にシュピナ社から
「12のレントラー(遺作)」として出版された。ただし自筆譜にはそのようなタイトルはなく、ただ
「Deutsches Tempo」(ドイツ舞曲の速さで)と書かれているのみである。新全集では、ブラームスの命名によると思われる「レントラー」の題が外され、「ドイツ舞曲」に分類された。
この連作舞曲は、調性配列、キャラクターの配置、モティーフの関連性などが緻密に考え抜かれており、また和声のパレットも多彩で、複雑な表情がもたらされている。「楽興の時」に比類しうる性格小品集の趣すらあり、シューベルトの舞曲集の中で最高の芸術性を誇る傑作といってよいだろう。
1. ニ長調 [T] レントラー型+メヌエット型前半、後半とも16小節に拡大されている。田舎風の保続低音で始まるが、中間部でヘ長調に転調し、和音の強奏とともに聴く者を驚かす。
2. イ長調 [B] メヌエット型こちらも後半が16小節だが、三部形式にはならず、二部形式が拡大した形である。力強いオクターヴユニゾンで始まる、ダイナミックな舞曲。1825年にカッピ社から作品33として出版された舞曲集「16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ」D783の第1曲に転用されている。
3. ニ長調 [B] ワルツ型減七の和音から始まり、半音階を多用した表情豊かな旋律線が魅力。
4. ニ長調 [B] ワルツ型元気な付点リズムを伴うマズルカ風の舞曲。同じ調性ながら前曲と対照をなす。
5. ロ短調 [T] レントラー型pppの最弱音が指示され、音価の長い和音が奏でられる静的な異世界。
6. 嬰ト短調 [T] その他+ワルツ型+メヌエット型ここにはもはや舞踏の要素はほとんど残っていない。独特の掛留と半音進行を多用し、ずるずると下降する音型、痛みを吐露するような和音の強奏が強烈な印象を与える。
7. 変イ長調 [T] レントラー型主音のバスをペダルで伸ばすように指示されており、冒頭曲にも似た田園的な雰囲気がある。
8. 変イ短調 [T] ワルツ型プラルトリラーで始まるメロディーと複雑な和声が、古き佳き時代のメランコリックな情緒を醸し出す。この曲もD783の第10曲に転用されているが、そこではイ短調に移調されている上、前半がもっと単純な音楽に書き換えられている。おそらく原曲はこのD790で、出版目的のD783に収録するにあたって、易しく書き直したのであろう。
9. ロ長調 [B] ワルツ型無窮動ながら優しげな旋律線は、ショパンのワルツにも通じる洗練を感じさせる。
10. ロ長調 [B] ワルツ型後者は跳躍の多い旋律とモティーフ間の対話が楽しく活発な印象。
11. 変イ長調 [B] その他+ワルツ型属音の保続の上に、表情豊かな和音がしっとりとした情感を残す。
12. ホ長調 [B] ワルツ型後半がやや拡大されている。単純な和声と繰り返しの多い旋律はさながら手回しオルガンのようだが、その機械的な進行の中に一瞬だけ現れる転調がきらりと光る。
- 2016/04/06(水) 22:42:52|
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