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12のエコセーズ D781 概説

Brown, Ms. 44  12のエコセーズ  12 Ecossaisen
タイトル:12 Eccossaisses
日付:1823年1月
所蔵:ウィーン楽友協会資料室(資料番号 A261)

12のエコセーズ 12 Ecossaisen D781
作曲:1823年1月 出版:1825年(第1曲)・1824年(第4・7曲)・1889年(その他)
楽譜・・・IMSLP

1823年1月の日付を持つBrown, Ms.44の「12のエコセーズ」のうち、第1曲は「16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ」D783の第2エコセーズとして収録されたため、旧全集ではこれ以外の11曲をまとめて曲集とした。これを踏襲してD781を「11のエコセーズ」とする資料や楽譜も多く、中にはD782のエコセーズと合わせて12曲という解釈をしている資料もある。
今回はドイチュ目録に従い、D783-E2を含む12曲を自筆譜と同じ曲順で演奏する。

1. ロ短調→ニ長調 (=D783-E2)
理論的にはニ長調のVIの和音から始まっていると解釈することもできるが、ロ短調で始まり途中で平行調のニ長調に転調するとみる方が自然だろう。このように曲頭と曲尾の調性が異なり、とりわけ平行調への転調が多いのがこのエコセーズ集の特徴で、シンプルで短いエコセーズに変化とドラマを持たせようという工夫が感じられる。

2. 変ト長調
突如としてフラット系の世界へ入る。前曲のニ長調から見るとずいぶんな遠隔調だが、ロ短調から見ればドミナント調(嬰ヘ長調)の異名同音と考えられる。後半ではやはり平行調(変ホ短調)への接近が見られる。

3. ニ長調
モティーフは第1曲とよく似ている。後半のバスの半音下行が印象的。

4. 変ト長調
再び♭6個、そして前半の終わりは平行調の変ホ短調で終止する。後半は単純な反復ではなく、最終2小節に2番括弧が設定されている。
この曲と第7曲、そしてD782のエコセーズは1824年にライデスドルフ社から選集として発表されているが、そこではト長調に移調されている。詳しくはD782の解説で述べよう。

5. 変ホ長調
前曲の平行調(変ホ短調)の同主調。前半ではメロディーがどんどん上昇していく。

6. 変イ長調
第4曲同様に平行調(ヘ短調)で前半を終える。後半ではII度調の変ロ短調も経過する。

7. 変ホ短調→変ト長調
両手で短い和音を連打する面白い舞曲。[4]の1拍目の不協和音も興味深い。後半では平行調の変ト長調へ転調しそのまま終止する。

8. ロ短調→ロ長調
[1]のH音から[2]のEis音というユニゾンの増4度跳躍はまさにデモーニッシュ。後半ではD音に臨時記号の♯がついてロ長調で終止する。全曲の中で最も落ち着かないエコセーズである。

9. ニ長調
アウフタクトにドミナントの和音という意表を突いた開始。伸びやかな旋律線が魅力的だ。後半でのバスの半音上行は第3曲と対応する。

10. ロ長調
右手がメロディーとともに属音の保続をオクターヴで重ねる。前半の終わりでは平行調の嬰ト短調で半終止する。[11]のFisisとFisの二重倚音はいかにもロマン派的。

11. 嬰ト短調→ロ長調
高音域での逆付点のリズムがクリスタルな響きを生む。後半では平行調のロ長調に転調し、[12]のIV度ドミナントの強奏が衝撃を与える。

12. ロ短調→ニ長調
第1曲と同じ調性関係の終曲。シューベルトの偏愛したダクティルスのリズムに支配されている。
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  1. 2022/04/10(日) 09:23:31|
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