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シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
次回公演詳細

[告知] シューベルトツィクルス第10回「舞曲Ⅱ ―最初のワルツ―」

第10回チラシ
2019年4月5日(金)19時開演 東京文化会館小ホール
♪3つのドイツ舞曲 D972 ♪36のオリジナル舞曲(ワルツ) D365(「最初のワルツ」) ♪2つの舞曲 D980A(断片・佐藤卓史による補筆完成版)
♪エコセーズ 変ホ長調 D511 ♪ドイツ舞曲 変ト長調 D722 ♪12のワルツ、17のレントラーと9つのエコセーズ D145 ♪6つのレントラー D970
♪2つのレントラー D980C(断片・佐藤卓史による補筆完成版) ♪8つのエコセーズ D977 ♪6つのエコセーズ D421
一般4,000円/学生2,000円 →チケット購入
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  1. 2019/04/05(金) 19:00:00|
  2. シューベルトツィクルス
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Brown, Ms. 39 7つのドイツ舞曲

Brown, Ms. 39  7つのドイツ舞曲  Sieben Deutsche
タイトル:なし
日付:1821年3月8日(第1~6曲)、1821年5月20日(第7曲)
所蔵:ベルリン国立図書館(資料番号 Mus. ms. autogr. Schubert 23) →デジタルデータ

タイトルはないが、通し番号はシューベルト自身の筆跡で記されている。
嬰ヘ長調で書かれた第1~4曲・第6曲はヘ長調に移調されてD365の締めくくりに、第7曲はD145に収録され、残った第5曲にはD722のドイチュ番号が与えられた。

1. 嬰ヘ長調 →D365-32 ヘ長調
出版譜との相違点は、(調性を除けば)極めて少ない。[9]の左手の和音が微妙に異なるが、これはむしろOp.9-32(A-Cis-G)では「導音重複」という禁則を犯しており、この自筆譜の和音(As-Es-Ges)の方が正当である。製版時のミスかもしれない。[13][21]などのスラーの有無、2度のcrescの位置が若干異なる以外は、決定稿と言ってよい。

2. 嬰ヘ長調 →D365-33 ヘ長調
テクスト上の相違点はごくわずかだが、[17]-[32]にOp.9-33にはない繰り返し記号がついているのは大きな違いかもしれない。[25][27][29][31]1・2拍目の和音連打にスタッカートを欠いているが、これは単なる省略とも考えられる。

3. 嬰ヘ長調 →D365-34 ヘ長調
音符は完全に一致。冒頭2小節の前奏で、3拍目にfpが付けられているのは興味深い相違点である。他に[3]右手の半音階にスラーが付されているのを除けば出版譜と違いはない。

4. 嬰ヘ長調 →D365-35 ヘ長調
後半の右手のスラーを欠いている他は出版譜と一致しており、決定稿といえる。

5. 変ト長調 D722
この自筆譜の中で唯一、生前の出版に含まれなかった曲である。詳しくは別記事で解説したい。

6. 嬰ヘ長調 →D365-36 ヘ長調
[2][4][14]で、Op.9-36よりも和音の構成音が多い。またアーティキュレーションに多くの違いがあり、とりわけ後半にはスタッカートによる分断がなく、長いスラーがかけられているのが目を引く。デュナーミクにおいては、[11]にcresc.の指示があるのが興味深い。

7. ロ長調 →D145-W2 ロ長調
日付を見るに、この曲だけが後から書き込まれたようだ。
Op.18-W2との相違は少ない。左手の伴奏型の2拍目の音を保持する2分音符がないこと、[14]3拍目右手の内声がないこと、[17]3拍目~[18]1拍目、[19]3拍目~[20]1拍目の右手のタイがないこと、最終小節の2括弧(左手が停止)がないことが指摘できる。またアーティキュレーション、アクセント等にも微妙に違いがある。

D365に収録された5曲については出版譜との相違が極めて少なく、決定稿に近い段階と思われる。
  1. 2019/03/19(火) 19:49:55|
  2. 舞曲自筆譜
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