シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
次回公演詳細

[告知] シューベルトツィクルス第7回「人生の嵐 ―4手のためのピアノ曲―」

シューベルトツィクルス第7回チラシ
2017年6月22日(木)19時開演 東京文化会館小ホール * ゲスト:川島基(ピアノ)
♪序曲 ト短調 D668 * ♪12のドイツ舞曲 D420 ♪8つのエコセーズ D529 ♪12のレントラー D681より 現存する8曲
♪序奏、創作主題に基づく4つの変奏曲とフィナーレ 変ロ長調 D968A * ♪アレグロ・モデラート ハ長調 と アンダンテ イ短調 D968 *
♪アレグロ イ短調 D947(「人生の嵐」) * ♪ロンド イ長調 D951(「大ロンド」) *
一般4,000円/学生2,000円 →チケット購入
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  1. 2017/06/22(木) 19:00:00|
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8つのエコセーズ D529 概説

8つのエコセーズ Acht Ecossaisen D529
作曲:1817年2月 出版:1871年(第1~3,6,8曲)/1897年(第4,5,7曲)
楽譜・・・IMSLP

(曲種「エコセーズ」の解説はこちら)

シュパウン家に伝わる自筆譜には1817年2月の日付がある。8曲のうち、第1~3曲、第6曲、第8曲のみが抜粋され、D420と組み合わせて1871年に出版されたことは前述した通りである。この5曲が抜粋された経緯は定かではないが、おそらくシューベルト自身が5曲を抜き出して別の自筆譜を作成し、これがシュタットラーを経てゴットハルトに渡り、D420同様製版後に散逸したとみられる。
このとき出版されなかった3曲は1897年に新全集の補遺として初めて公開されたが、他の5曲はやはりD420と組み合わせた形で1888年の本巻に既に収められていたので、収録巻が2つに分かれてしまった(IMSLP参照)。そういう経緯もあり、D529については今も「5つのエコセーズ」の表記が根強い。今回の公演の告知資料にも「5つのエコセーズ」と表記してしまったが、自筆譜に基づき「8つのエコセーズ」として、自筆譜通りのオーダーで演奏する。
第3曲を除いてすべてニ長調で書かれており、全曲エコセーズの定型通り8小節+8小節の二部形式をとっている。

1. ニ長調
 シューベルトの好みのダクティルスによる開始。左手にホルン風の音型が現れる。
2. ニ長調
 ファンファーレ風の和音に続き、ギャロップのようなスケルツァンドな音型が奏される。
3. ト長調
 装飾音を伴うモティーフは前曲のB部分から採られている。
4. ニ長調
 意表を突いたドミナントからの開始。右手は無窮動の8分音符が続き、左手には再びホルン音型が登場する。
5. ニ長調
 前曲に続いて右手は無窮動。B部分はソロとトゥッティの対比になっている。
6. ニ長調
 ダクティルスとは逆の、短短長のリズムで重音や和音が刻まれていく。
7. ニ長調
 前曲と同じく短短長リズムだが、こちらは単音の連打でより軽やかな曲想。連打には432という指使いまで指定されている。
8. ニ長調
 冒頭に「Nach einem Volkslied」(民謡に基づく)との注記がある。ドイチュの研究によると、ニーダーエスターライヒの民謡「's Bedlwaibl wollt Kiarifiartn gehn(貧しい女は市に行きたかった)」、別名「Der geschlagene Mann」(殴られる男)が原曲だという。
この民謡は古くから存在したようで、既に1578年の文献に載っているというが、その後アルプス地方で長く歌い継がれ、1818年にフランツ・ツィスカとユリウス・マックス・ショットキーが編集した「オーストリア民謡集」に収録されている。モーツァルトのディヴェルティメント第15番K.287の終楽章をはじめ、数多くの音楽作品に引用されている有名なメロディーだったようだ。シューベルトの舞曲でこのような注記がある作品は珍しいが、きっと仲間内でも評判になったことだろう。
  1. 2017/06/13(火) 08:51:39|
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12のドイツ舞曲 D420 概説

12のドイツ舞曲 Zwölf Deutsche D420
作曲:1816年 出版:1871年
楽譜・・・IMSLP

(シューベルトの舞曲について 概略)
(舞曲の種類)

1871年、ウィーンのJ.P.ゴットハルト社から「12のドイツ舞曲と5つのエコセーズ(1817年)」として出版された(「5つのエコセーズ」は8つのエコセーズD529からの抜粋で、これについては別記事で詳述する)。底本となった自筆譜はシューベルトの友人、アルベルト・シュタットラーAlbert Stadlerが所有していたもので、前年の暮れに他の自筆譜とともにゴットハルトに売却された。自筆譜はこの出版の後に処分されてしまったものと思われる。別にシュパウンが作成した筆写譜があり、そこには「1816年」という作曲年が記録されていたが、この資料も現在は行方不明になってしまった。現在のところ唯一の原資料はゴットハルト社の初版譜ということになる。ただし初版では一部の繰り返し記号が省略されていて、現行のヘンレ版や新全集ではシューベルトの他の舞曲に倣って繰り返し記号を補った形で出版されている。

この舞曲集の最大の特徴は、最終曲のあとに大規模な「コーダ」が置かれていることである。またニ長調の舞曲とイ長調の舞曲が交互に現れ、中央にあたる第7曲のみがホ長調というシンメトリカルな調性配置もあまり類を見ない。これらのことは、この作品が単なる実用のスケッチ集ではなく、通奏を前提として作曲された連作であることを示している。

以下、舞曲の分類方法については以前に書いたこちらの記事を参照されたい。
コーダを別として、全12曲はいずれもB(二部形式)をとっているため、構造の分類は割愛する。

1. ニ長調 ワルツ型
 平行6度で重ねられたメロディーは管楽器の音色を思わせる。B部分のファンファーレのような力強いオクターヴユニゾンが印象的。
2. イ長調 ワルツ型
 ドミナントの和音から始まり、ややコケティッシュな表情。
3. ニ長調 ワルツ型
 オクターヴで重ねられた高音域のメロディーが繊細な印象を与える。バスラインの進行も美しい。
4. イ長調 ワルツ型
 2小節ごとのフレーズの開始音にターン型の前打音が付いていて、どことなくレントラー的な鄙びた雰囲気を醸し出す。
5. ニ長調 ワルツ型
 跳躍の多い旋律線はヨーデルを思わせ、こちらもやはり田舎舞曲の趣。
6. イ長調 その他+ワルツ型
 3度の平行で滑らかに始まるが、B部分ではバスが勢いよく跳躍する。
7. ホ長調 ワルツ型ドイツ舞曲型
 唯一のホ長調の舞曲。3連符のアウフタクトがスケルツァンドな性格を表す。B部分の前半は伴奏型がドイツ舞曲型の和音連打に。
8. イ長調 メヌエット型ワルツ型
 各部の前半はオクターヴのバスが連続する豪快なメヌエット型、後半は柔らかなワルツ型に変化する。1拍半分のアウフタクトが精力的なリズムを導く。
9. ニ長調 メヌエット型
 付点を伴うアウフタクトで始まるスタティックなリズムはいかにもメヌエット風。
10. イ長調 ドイツ舞曲型(変形)
 A部分の左手は厳密には同音連打ではないが、ドイツ舞曲型に分類してよいだろう。そのいくぶん原始的なリズムに乗って、右手は3度の重音を奏でる。
11. ニ長調 ワルツ型+その他
 一転してII度の和音から始まるメランコリックな舞曲。B部分では前曲に引き続き3度の平行がモティーフとなる。
12. イ長調 ワルツ型
 ひらひらと舞い降りる分散和音型のメロディーに、借用和音を多用した複雑な和声がつく。B部分の3度重音の下降音階は、シューベルト舞曲としては珍しい高度な演奏技術を要する。
コーダ ニ長調
 64小節に及ぶ長大なコーダは、3つの部分に分かれている。A(16小節)はニ長調からイ長調を経て嬰ヘ短調で終止。B(24小節)は嬰ヘ短調からイ長調、そしてニ長調に戻る。これら2つのセクションはそれぞれリピートを伴う。ファンファーレ風の和音連打と、その主題の叙情的な変奏が交互に奏され、最後のC部分ではファンファーレが連続、そして分厚い和音の強奏で力強く曲集を閉じる。舞踏会の締めくくりを演出するかのようなコーダは、シューマンの「謝肉祭」にも通じる華やかさがあり、曲集全体が一晩の舞踏会を描写しているようでもある。
  1. 2017/06/12(月) 22:04:32|
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