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シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
次回公演詳細

[告知] シューベルトツィクルス第16回「舞曲Ⅲ ―最後のワルツ―」

シューベルトツィクルス第16回
2022年4月14日(木) 19時開演 東京オペラシティリサイタルホール
♪ドイツ舞曲 D135 ♪ドイツ舞曲 D139 ♪20のワルツ D146(「最後のワルツ」)
♪エコセーズ D158 ♪ドイツ舞曲 D975 ♪16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ D783
♪3つのドイツ舞曲 D971 ♪3つのドイツ舞曲 D973 ♪2つのドイツ舞曲 D974 ♪2つのレントラー D980B
♪2つのドイツ舞曲 D841 ♪ギャロップと8つのエコセーズ D735
一般4,500円/学生2,500円 →チケット購入
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  1. 2022/04/14(木) 19:00:00|
  2. シューベルトツィクルス
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ドイツ舞曲 D139 概説

ドイツ舞曲 嬰ハ長調 Deutscher Cis-dur D139
作曲:1815年 出版:1930年
楽譜・・・IMSLP

Brown, Ms.9の第3曲である本作は、シューベルトの全舞曲の中でも最も過激な作品であり、D146への収録が躊躇われたことも頷ける。

主部 嬰ハ長調 [T] ドイツ舞曲型
トリオ イ長調 [T] ドイツ舞曲型


嬰ハ長調という突飛な調性だけでなく、sempre ffでただオクターヴや5度を打ち鳴らすだけという野蛮ぶりはほとんどドンチャン騒ぎの域である。シューベルトが時折垣間見せる躁的・露悪的な側面が現れている。
トリオは右手がアルペジオを縦横無尽に奏するエチュード風の楽曲。ppからffまで強弱の幅も広い。
  1. 2022/04/07(木) 21:31:10|
  2. 楽曲について
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ドイツ舞曲 D135 概説

ドイツ舞曲 ホ長調 Deutscher E-dur D135
作曲:1815年 出版:1930年
楽譜・・・IMSLP

Brown, Ms.9の第1曲のトリオはD146に採用されなかったため、この舞曲全体がD135としてドイチュ目録に載ることになった。D146-3の初稿などと説明されることもあり、トリオ部分のみをD135としている資料もある。

主部 ホ長調 [T] ドイツ舞曲型
トリオ ホ長調 [T] ドイツ舞曲型


主部についてはD146(第3曲)の解説で述べたが、その重厚な響きと対照的にトリオは高音部に偏った薄いテクスチュアで書かれている。短前打音とsfのついたアウフタクトから始まり[3]にはターンも現れるメロディー、B部での低音部からの上行アルペジオなど、チャーミングな箇所が多いトリオで、なぜD146に入集できなかったのか不思議に思える。
  1. 2022/04/07(木) 13:19:42|
  2. 楽曲について
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Brown, Ms. 9 12のトリオ付きドイツ舞曲

Brown, Ms. 9  12のトリオ付きドイツ舞曲  Zwölf Deutsche mit Trios
タイトル:12 Deutsche sammt Coda (12のドイツ舞曲とコーダ)
日付:1815年
所蔵:パリ国立高等音楽院 →デジタルデータ

(舞曲自筆譜ならびにブラウン自筆譜番号についてはこちら)

1815年、シューベルトが18歳のときの作品。清書譜で、立派な表紙が付けられており、フェルディナントの筆でディアベリに預けた旨が記されている。
しかしながらタイトルにある「sammt Coda(コーダつき)」という文言は解せない。D420のようにコーダ(終結部)の付いている舞曲集も存在するが、この曲集にはコーダは付いていない。
「トリオ付き」というべきところを間違えたのだろうか。この舞曲集の特異なところは、各曲がトリオを伴うダ・カーポ形式で書かれているということで、トリオは主部に依存しない独立した楽曲になっている。つまり、細かく数えれば24ピースの舞曲がここに収められているということだ。そのうちの20ピースが「20のワルツ」D146(Op.127)の中の10曲を構成している。わざわざ主部とトリオを別々に数えたことからも分かるとおり、
●主部・トリオともにそのまま入集したのが7セット=14ピース(うち1曲はトリオのみ移調)
●主部とトリオを交換した舞曲が1対2セット=4ピース(いずれも移調あり)
●主部同士で組み合わせられたのが2ピース

である。残り4ピースのうち1ピースはD145-W8として別途出版されており、その他の3ピース(トリオ1とセット1)には独立したドイチュ番号が与えられた。

トリオを伴う舞曲の代表例にはメヌエットがある。この自筆譜が成立した1815年にはシューベルトはまだメヌエットの作曲をやめていない。そうした初期のスタイルを色濃く残すとともに、シューベルティアーデの舞踏会で実際に踊られるようになって以降の「実用的な」舞曲とは異なる、形而上的な舞曲集ともいえる。その点ではシューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」等の先駆ともいえるだろう。

以降「Op.127」と表記するのは「20のワルツ」D146(作品127)の出版譜を指す。この自筆譜がOp.127のソースである(別稿はない)ことは確実だが、それでも出版にあたってさまざまな改変が加えられており、その内容や理由について以下で考察したい。

1. ホ長調 → D135 / 主部はD146-3(主部)
主部はOp.127-3の主部と全く同一である。
トリオはD146(Op.127)には収録されなかったため、この舞曲全体がD135としてドイチュ目録に掲載されたが、トリオ部分のみをD135とするという見解もある。

2. イ長調/嬰ヘ短調 → 主部はD146-3(トリオ)、トリオはD145-W9
トリオは既にOp.18-W9に収録されているため切り離され、主部が前曲の主部と組み合わされてOp.127-3に収まった。Op.127-3(トリオ)では中間部にデュナーミクの加筆があり、[11]の2拍目にsf、[14]にクレシェンドの松葉がついて[15]のfの位置が変わっている。[14][15]の改変については本来の意図に反するように思われる。

3. 嬰ハ長調/イ長調 → D139
♯7個という特殊な調号を持つこの荒々しい舞曲はOp.127には入集せず、後にD139の番号を与えられた。この作品については別に解説する。

4. ロ短調/ト長調 → D146-7
Op.127-7では主部の[7]の3拍目のsfが消えている一方で、B部冒頭の[9]アウフタクトにfの指示が加筆されている。トリオでは[11][15]の右手の付点2分音符にアクセントが加えられているが、微細な変更といえよう。

5. ヘ長調/変ロ長調 → D146-10
Op.127-10では主部の[13]以降の左手2拍目のsfがアクセント記号(>)に変えられている他、大幅な変更として[31]アウフタクトから[37]1拍目までの右手に8va(Ⅰオクターヴ高く)が書き加えられており、華やかさが追求されている。トリオは同一。

6. ニ長調 → D146-6
Op.127-6との大きな相違はなく、主部集結前の[31]3拍目のsfやトリオ[17]開始時のpの指示が欠けているが、見落としといって差し支えない程度の変化である。

7. ヘ長調/変イ長調 → D146-5(トリオは変ロ長調に移調)
Op.127-5の主部とはほぼ相違なく、[35]3拍目の和音の左右の手の配置が異なることと、[40]3拍目の右手になぜかスタッカートが付いたことぐらいである。トリオ全体は変イ長調から長2度高い変ロ長調に移調されているが、むしろ主部との取り合わせの面では変ロ長調の方が違和感が少ないかもしれない。初稿で変イ長調が選ばれた理由は、おそらく[27]の最高音Fがこの時期の通常のピアノの最高音だったからで、1830年には音域の広い楽器も普及していたため変ロ長調(最高音はGになる)に移調して差し支えないという判断があったのだろう。

8. 変ロ長調 → D146-11
主部[15]右手にスラーが補われたことと、トリオのデュナーミク指示がppからpへ変更された他はOp.127-11と相違ない。

9. 変ト長調 → 主部はD146-8主部、トリオはD146-1トリオ(いずれもト長調に移調)
♭6個はさすがに出版には向かなかったと見え、♯1個のト長調に移調された上でバラバラに切り離され、次曲とカップリングされることになった。
主部とOp.127-8主部を比較すると、冒頭のf・[9]アウフタクトのffというデュナーミク指示が、冒頭はなし・[9]アウフタクトはfに減少させられている。トリオとOp.127-1の比較では、[1][17]アウフタクトの右手にスタッカートが追加されたのみである。

10. ニ長調 → 主部はD146-1主部、トリオはD146-8トリオ
勢いも良く祝祭的なこの曲を曲集の幕開けに据えたいという出版社の意図はよくわかるが、なぜ主部とトリオがバラバラにされて前曲と組み合わされなければならなかったのかはよくわからない。Op.127-1における主部の大きな変更点としては、和音連打に初稿にはなかったスタッカートの点が付加されたことである。トリオは同一。

11. イ長調 → D146-4
Op.127-4の主部では右手の多くの4分音符にスタッカートの点が付加されている。トリオはかなり大幅に改変されており、初稿では三部形式[T]だった舞曲の最後の8小節を端折って二部形式[B]に縮めている。[1][9]の左手の1拍目のバスのオクターヴも消え、単なる和音連打の伴奏型となった。

12. ハ長調 → D146-9
Op.127-9では主部[1][9][25]の1拍目の右手のGのオクターヴが装飾音つきの単音に変えられているが、これは左手の2拍目のGと右手の下声が衝突するのを避けるための処置だろう。同様に主部最終小節の右手のCのオクターヴも単音になっている。トリオは[1]等の右手の3拍目の8分音符にスラーが付加されている他は大差ない。
  1. 2022/04/06(水) 23:31:59|
  2. 舞曲自筆譜
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20のワルツ(「最後のワルツ」)D146 概説

20のワルツ(「最後のワルツ」) 20 Walzer ("Letzte Walzer") D146
作曲:1815年/1823年 出版:1830年(作品127)
楽譜・・・IMSLP


シューベルトの死の翌々年、1830年にディアベリ社から「フランツ・シューベルトの最後のワルツ」として出版された。最初の出版作である「36のオリジナル舞曲」D365(作品9)が『最初のワルツ』と改題されて新装再版されたのが同じ1830年のことで、出版社としては『最初のワルツ』と『最後のワルツ』を対応させることで相互の販売促進を図ったのだろう。
タイトルに反して、これはシューベルトが生涯の最後に作曲した舞曲集ではない。すべての収録曲について、珍しく自筆譜が残っていて作曲年代が明らかになっている。
それによれば第1曲と第3~11曲の計10曲は1815年の日付を持つ「12のドイツ舞曲とコーダ」(Brown, Ms.9)(ブラウン自筆譜番号についてはこちら)から採られていて、残りの第2曲と第12~20曲の計10曲は1823年2月の日付を持つ17の「ドイツ舞曲」の自筆譜(Brown, Ms.45)に由来している。2つの別々の舞曲集の束の中から、半分ずつ集められたということだ。
そのために、大まかに言って曲集の前半と後半で舞曲の様相が大きく異なっているBrown, Ms.9のドイツ舞曲の特徴は、なんといっても「トリオ」を伴う大規模なダ・カーポ形式で書かれているということだ。楽式としてはメヌエットに近く、その後のドイツ舞曲やレントラー等には見られなくなった、「古い」スタイルである。
通常のシューベルト舞曲は最短の場合A(8小節)+B(8小節)の16小節が基本で、演奏の際はそれぞれのセクションが反復されて合計32小節となるが、このトリオ付きのドイツ舞曲は
||: A :|: B :||: Trio-A :|: Trio-B :|| A | B ||
という楽式となり、1セクションが最小単位の8小節だとしても延べの小節数は80小節に及ぶ。1曲につき通常の舞曲の2.5倍の長さ(演奏時間)を要するということだ。

一方のBrown, Ms.45のドイツ舞曲は16小節(三部形式の場合は24小節。舞曲の構造についてはこちら)を基本とした「新しい」スタイルの舞曲だ。同じ自筆譜の他の作品が「34の感傷的なワルツ」D779や「16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ」D783などに収録されていることからみても、こうした生前の舞曲集に収められても違和感のないスタイルだということが納得されるだろう。
逆に言えば、出版社が保有していた自筆譜の中で、第1弾の出版に選ばれなかった、いわば“残り物”がここに集められたともいえる。1815年のBrown, Ms.9にはいわゆる「ドイツ舞曲」型のオクターヴ・和音連打の伴奏型が多く、いくぶん粗野な雰囲気が漂うが(中でも超ラディカルなD139はこの曲集にさえ収められなかった)、後半の1823年の舞曲にも力強いオクターヴを伴うものが多く、全体としてエネルギッシュな性格の舞曲集になっている。「優雅な」ワルツというイメージの過去の曲集にはそぐわなかったのかもしれない。
一方で興味深いのは曲の配列への気遣いだ。トリオ付きのBrown, Ms.9とトリオのないBrown, Ms.45から「新旧」の1曲ずつをまず抜粋する。その後、Ms.9は曲順の変更だけでなく主部とトリオの組み替えも施され、Ms.45では曲尾の不完全小節の処理まで丁寧に記譜されている。新全集が指摘している通り、これは曲集を「通奏」することを前提にした処置だろう。1830年の時点で、舞曲集はもはや単なるパーツの集積ではなく、1つのまとまった組曲として演奏されることが期待されていたということだ。
1825年までシューベルトの舞曲集をほとんど独占的に出版していたディアベリにとっては、作曲者が死去してしまった今、新たな舞曲が作られる可能性も無くなり、無断で預かりっぱなしになっていた自筆譜の中から残り物を見繕って「もう一儲け」したということになる。そういう意味では確かにディアベリにとっての「シューベルトの最後のワルツ集」というのは間違ってはいない。

舞曲の分類についてはこちら

1. 主部 ニ長調 [T] ドイツ舞曲型
 トリオ ト長調 [T] ドイツ舞曲型

 主部はBrown, Ms.9の第10曲主部、トリオは同じく第9曲のトリオ(原調は変ト長調)と異なる原曲から組み合わされたもの。主部は典型的な「ドイツ舞曲」型のオクターヴ連打の伴奏型の上で、力強く和音が刻まれていく。トリオは一転して長短リズムの伴奏に乗ったやさしいシチリアーノ風の舞曲。
2. イ長調 [B] メヌエット型-ワルツ型
 こちらはBrown, Ms.45の第3曲であるとともに、Ms.50、Ms.52にも登場する人気の舞曲。左手はやはりオクターヴだが、拍ごとに音が移動していく。3拍目に付けられたアクセントが特徴的だ。力強いffの前半に対して後半はpとなり伴奏型もワルツ型に変移する。
3. 主部 ホ長調 [T] ドイツ舞曲型
 トリオ イ長調 [T] 混合型

 主部はBrown, Ms.9の第1曲(=D135)主部、トリオは同第2曲主部という、主部同士の組み合わせである。第2曲の本来のトリオは嬰ヘ短調で、D145-W9に収められている。
 主部・トリオともども付点リズムを伴う和音連打が特徴的で、ファンファーレ風の豪勢な1曲になっている。
4. 主部 イ長調 [T] ワルツ型ドイツ舞曲型
 トリオ イ長調 [B] ドイツ舞曲型

 Brown, Ms.9の第11曲。主部は2小節に1回バスが打ち鳴らされる、拡大されたワルツのような伴奏型の上で、オクターヴで重ねられたメロディーが勇壮に奏でられる。トリオは一転して内省的。
5. 主部 ヘ長調 [T] その他
 トリオ 変ロ長調 [T] レントラー型

 Brown, Ms.9の第7曲だが、トリオは変イ長調から変ロ長調に移調されている。主部は三部形式ではあるが、A(16小節)-B(12小節)-A'(16小節)の合計44小節という大規模なもの。上行アルペジオと和音連打が活発な性格を与えている。トリオは主音保続のレントラー型伴奏の上で6度重音を基調とした旋律が歌われる。特にB部のシューベルトらしい繊細な半終止が美しい。
6. 主部 ニ長調 [B] その他
 トリオ ニ長調 [T] メヌエット型

 Brown, Ms.9の第6曲。主部の左手の音階的なパッセージは舞曲としては異色である。前半ではIからVへ、後半ではVからIへ向かうというシンメトリカルな構成。トリオは伴奏型だけしかないようなシンプルなものだが、すべての音の間に8分休符が挟まれている記譜法(スタッカートを意味する)が目を引く。
7. 主部 ロ短調 [T] ドイツ舞曲型
 トリオ ト長調 [T] ワルツ型ドイツ舞曲型

 Brown, Ms.9の第4曲。左手が打ち鳴らす和音の連打、右手のオクターヴ、強拍に付けられたsf、ロ短調という調性がデモーニッシュな性格を与える。トリオは一転して伸びやかでやさしい曲想。
8. 主部 ト長調 [T] その他
 トリオ ニ長調 [T] レントラー型

 Brown, Ms.9の第9曲の主部(原調は変ト長調)と第10曲のトリオの組み合わせ。1曲目と対になる存在である。3拍目のsfから1拍目に解決するタイ・スラーが剽軽な印象を与える。トリオはホルン風の重音のメロディーを左手が小川のざわめきのように静かに伴奏する。
9. 主部 ハ長調 [T] レントラー型
 トリオ ハ長調 [B] ドイツ舞曲型

 Brown, Ms.9の第12曲(終曲)。全体を通してバスの保続音が続き、いかにもレントラー風の鄙びた舞曲である。オクターヴで重ねられたメロディーが上昇していく主部に対してトリオはコラール風の書法で内向的。
10. 主部 ヘ長調 [T] ワルツ型
 トリオ 変ロ長調 [T] ドイツ舞曲型

 Brown, Ms.9の第5曲。オクターヴユニゾンの序奏から始まり、スタッカートの付いたオクターヴ重音、縦横無尽の転調とスペクタクルが満載。まるでシューマンの「パピヨン」や「謝肉祭」を思わせる刺激的なワルツだ。トリオでは単純な伴奏型の上で右手が8分音符のパッセージを奏でるが、B部では長3度下の変ト長調へ転調する。
11. 主部 変ロ長調 [T] ワルツ型ドイツ舞曲型
 トリオ 変ロ長調 [T] その他

 Brown, Ms.9の第8曲。装飾音のついた音階パッセージが鍵盤を駆け上がる精力的な主部に対し、穏やかなトリオでは手の交差を用いた珍しいテクスチュアがみられる。
12. ト短調→ト長調 [T] ワルツ型
 ここから後のソースはBrown, Ms.45となり、その第11曲。3拍目に置かれたシンコペーションと短調ならではの半音階がエキゾティックだ。B部ではシンコペーションが左手に移り、A部の再現ではト長調に転調するなど凝った構成をとる。
13. ハ長調 [B] メヌエット型ワルツ型
 Brown, Ms.45の第12曲。和音の連打や3度の重音が支配する活発な舞曲。
14. ト長調 [T] ワルツ型
 Brown, Ms.45の第7曲。跳躍の多いメロディーと和音の連打が交替する。アウフタクトのプラルトリラーやホルン風の重音が鄙びたレントラーの風合いを醸す。
15. 変ロ長調 [B] ワルツ型
 Brown, Ms.45の第14曲。全編を通じてppの繊細な舞曲。ト短調のドミナントの和音から始まり、細かいスラーがニュアンスを添える。
16. ヘ長調 [B] メヌエット型ワルツ型
 Brown, Ms.45の第15曲。和音の連打がエネルギッシュ。前半では3拍目に置かれていた強勢が、後半では2拍目に移動する。
17. 変ロ長調 [B] ワルツ型
 Brown, Ms.45の第16曲。ウラ拍で属音を保続する内声が右手に現れる。前半は平行調のト短調に終止し、後半はそこから主調に戻る。
18. 変ロ長調 [B] ワルツ型
 Brown, Ms.45の第17曲。前曲に続きppの柔らかなワルツ。右手は旋律声部と、8分音符のトレモロの内声を担当する。ト短調のドミナントで半終止するのも前曲に少し似ている。
19. ヘ長調 [T] ワルツ型メヌエット型
 Brown, Ms.45の第13曲。ヘ長調とニ短調の2つの極を持ち、最初のAはヘ長調からニ短調へ、B部は前半はヘ長調、後半はニ短調。そして戻ってきたAではニ短調からヘ長調へというシンメトリカルな構成をとる。
20. 主部 ニ長調 [B] レントラー型
 トリオ ト長調 [T] ワルツ型

最終曲は再びトリオを伴う大規模なワルツだが、これはBrown, Ms.45の第4曲と第5曲を組み合わせたものである。この長大なワルツ集を締めくくるには、最後に再びダ・カーポ形式の舞曲が必要、と出版社は考えたのかもしれない。主部はスラーのかかった長短のモティーフがため息のような表情を見せる。トリオは一転して快活かつ技巧的で、全体にわたって右手が重音を奏で、時に対位法的に絡み合う。
  1. 2022/04/05(火) 22:43:18|
  2. 楽曲について
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