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シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
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12の高雅なワルツ D969 概説

12の高雅なワルツ Zwölf "Valses nobles" D969 Op.77
作曲:1826年? 出版:1827年
楽譜・・・IMSLP

1827年の舞踏会シーズンに合わせて、年初にハスリンガー社から出版された。出版される以前から仲間内では好んで踊られていたようで、おそらく出版の前年に作曲されたものと考えられている。シューベルティアーデでの本作の演奏について記述を残しているハルトマン兄弟は、あるときには「ドイツ舞曲」、あるときには「ワルツ」と呼んでおり、作曲者晩年のこの時点においても舞曲の呼称は定まっていなかったことが窺える。

感傷的なワルツ」と同じく、この「高雅なワルツ」も、その形容詞が曲の内容と一致していないということは、作曲年の5月に刊行されたフランクフルト音楽新報で既に指摘されている。各出版社が舞踏会シーズンにこぞって舞曲集を出版し、趣向を凝らしたタイトルで人目を引くものも多かった中で、「高雅なワルツ」はまだ控えめなネーミングだったといえるだろう。実際には、シューベルトの舞曲の中でも最も大胆かつ激しい音楽が繰り広げられており、強弱のコントラストも際立っている。

1. ハ長調 [B] その他+メヌエット型ワルツ型
ファンファーレ風の威勢の良いユニゾンが舞踏の幕開けを告げる。
2. イ長調 [B] ワルツ型
2拍目にアクセントを置いたマズルカ風のリズムが特徴的。
3. ハ長調 ドイツ舞曲型
58小節まで拡大され、構造も不定である。空虚5度の保続で始まり、3度や6度を伴う並行オクターヴの旋律が、牧歌的な伴奏に乗って歌われていく。途中突如イ長調に転調する部分は幻想的。
4. ト長調 [T] ワルツ型
長い倚音がしなだれかかるようなしなを作る。
5. イ短調 [T] メヌエット型ワルツ型
前半が16小節に拡大。両手のオクターヴが力強く堂々とステップを踏む。
6. ハ長調 [B] ワルツ型
分散和音のメロディーが続く、シンプルな舞曲。
7. ホ長調 [T] その他+ワルツ型
オクターヴの跳躍が華やか。8分音符の和音連打はどことなく軍隊風である。
8. イ長調 [T] その他
前曲の軍隊風の要素を引き継ぎ、舞曲というよりかわいい行進曲のような作品。再現のA'は音域が下がり、コーダ風になる。
9. イ短調 [T] その他+ワルツ型ドイツ舞曲型
再び短調となり、舞曲としては異例の激烈かつ悲痛な感情が吐露される。終盤では第3曲由来の空虚5度の保続が再登場するが、それは決してのどかなものではなく、一種の狂気すら感じさせる。
10. ヘ長調 [B] ワルツ型
前曲の緊張をほどくかのような優雅なワルツ。
11. ハ長調 [B] その他+ワルツ型
和音の連打が印象的。
12. ハ長調 [T] ワルツ型ドイツ舞曲型
中間部で突然遠隔調の変ロ長調に転調、天上の世界が広がる。後半の繰り返しはなく、最後は冒頭と呼応するようなオクターヴのユニゾンで、力強く曲集を締めくくる。
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  1. 2016/04/07(木) 10:13:20|
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