FC2ブログ


シューベルティアーデ電子版

ピアノ曲全曲演奏会「シューベルトツィクルス」を展開中のピアニスト佐藤卓史がシューベルトについて語る
次回公演詳細

中桐望さんインタビュー(4) その一言に尽きる

(インタビュー第1回はこちら)
(インタビュー第2回はこちら)
(インタビュー第3回はこちら)

佐藤 この間、マリア・ジョアン・ピリスのワークショップに参加されてるのを拝見しましたけど、いかがでしたか?
中桐 素晴らしかったです。ピリス先生は引退を発表されましたが、今回その引退公演で来日されていて、そのツアーのコンサートがすぐ後に控えているから、ワークショップの合間に練習されるんですよね。その練習を、生徒たちに普通に公開するんですよ。
佐藤 ほう!
中桐 終わって「私練習していくけど聴きたい人は聴いていいわよ」みたいな。当たり前ですけど誰も帰らないですよね。岐阜のサラマンカホールでワークショップをやっていたんですが、ステージの上に椅子を並べて、練習を至近距離からも見せていただいて。そうするとピリス先生のピアノに対する構え方とか、音楽に没入していく感じとか、表情とか空気とか息づかいとか、なかなか客席からではわからなかったことが、間近で見ることで体感できて。いろんな言葉で説明されるよりも、見ているだけでものすごく自分には勉強になりました。ああ、そういうことか音楽をするって、みたいな。
佐藤 はあー。
中桐 私自身2016年の秋に留学から帰ってきて、学生じゃなくなったっていうことがずっと不安で。今までは誰かにアドバイスをもらいながら作品を仕上げていってたのが、急に一人で全部やらなきゃいけない。プロの演奏家としての責任も感じたり、そういうことに1年半ぐらいずっと悩んでいたので。演奏も次第に凝り固まってくるというか、人前で演奏するんだったらクォリティも上げなきゃいけないし、作品もちゃんと解釈しないといけないし、その上で自分のオリジナリティみたいなものを、とか、考えることがいっぱいありすぎて、何かこう頭でっかちになってたんですけど、それをピリス先生にも指摘されて。もっと心を開いて、そんなに頭で考えないで感じるままに・・・って。聴衆とかメディアとかそういうことは一切気にしないで、音楽の真の姿に迫るのが私たちの使命だって、そういう先生の姿を見て、自分は今までいろんな理由やら言葉やらを並べて、自分のことを縛ってたなって気づいたら、すごく解放されて。
佐藤 うん。
中桐 作品を解釈するための勉強会というよりは、音楽と共にどうやって生きていくか、演奏家として音楽を奏でるとはどういうことか、みたいな、本質的・哲学的なところを学んだワークショップでした。素直に音楽を楽しめるように、またなってきたように思います。
佐藤 わぁ、それは貴重な経験でしたね。

中桐さんインタビュー2

佐藤 今後の音楽活動については。
中桐 楽しくやりたいです。もうその一言に尽きるなと。コンクールを受けていた時期、それこそ佐藤さんは本当にたくさんコンクールを受けられてて、尊敬すべき存在なんですけど、やっぱり苦しいじゃないですか。
佐藤 そうですね。
中桐 決して楽しくない。それに日本の文化の中で、クラシック音楽が存在することの難しさとか、アーティストの在り方も難しくって、そういうものにすごく悩んでた時期もあったんですけど。でも今は、何千人の大ホールの舞台とかじゃなくても、自分のやりたいことをやって、それを楽しんで聴いてくれる人がいる、そういう場があるだけですごく貴重で幸せなことだなと。プレッシャーとかストレスを感じることなく、楽しく演奏活動がやっていけたらいいなっていう思いでいますね。
佐藤 それができたら素晴らしいよね。
中桐 自分らしくマイペースにやっていきたいな、と。おかげさまで、帰国後も少しずつ演奏させてもらう場があるので。マネジメントも入らずに、フリーでやっているので、自由に自分のやりたい作曲家とか作品とかを。
佐藤 ちなみに今後、こういう作曲家に取り組みたいとかっていう計画はあるんですか。
中桐 もちろんショパンは自分にとって大事なんですけど、今はもっとレパートリーを広げたいんです。今年の夏はフランスものを弾きたいなと思って取り組んでいるんですけど。
佐藤 先日のB→Cでも、ドビュッシーとメシアンを聴かせていただきました。
中桐 そうなんです、そんな風にロシアものやドイツものにも、もうちょっと積極的に。あんまりこの作曲家が得意とかいうことを絞りすぎないで、自分の世界を広げていきたいと思っています。
佐藤 なるほど。前回川島さんと喋ってたら、「僕らはどんどんレパートリーが狭まっていくよね」って話になって、もうフランスものなんかとんと弾かなくなったよね、なんて(笑)
中桐 拝見しました。でも、それこそ佐藤さんはシューベルトが好きって、羨ましいなと思うんですよ。自分でこの作曲家とかこういう曲がレパートリーですって言えるのが。そういうのがあればいいんですけど・・・、私欲張りなんですかね?
佐藤 (笑)いや、いいんじゃないの?
中桐 いろいろやりたいんです。自分に合ってるのって何だろうって、まだ迷子で。自分にはたぶんもっとフィットする作品が他にもたくさんあるはずだから、そういうのに出会いたいというか。そのために、特定の作曲家に限定しないで、いろんなレパートリーに挑戦してみたいです。
佐藤 是非シューベルトも今後やってみて下さい。
中桐 やりたいと思います!

(インタビュー完 ・ 2018年6月6日、岡山市にて)
スポンサーサイト



  1. 2018/09/21(金) 21:25:29|
  2. シューベルトツィクルス
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0